継続日数

藤原です。

この日の稽古でも、あやのちゃんが発声練習を指導してくれました。
早口言葉で、「ダシャ・ソウシャ・ショウシャ・ソウシャイッソウ」というのをやりました。
漢字に変換すると、「打者・走者・勝者・走者一掃」となるのですが、音だけ聞いても、なかなか理解できませんでした。
その時にみずきくんが、「バッター・ランナー・ウィナー・ランナー・ワイプアウトってこと?」と言いました。
なんでわざわざ英語にしたん? と私は思いましたが、口には出さず、淡々を早口言葉をこなしました。

稽古後、雨が降っていて、ロビーでみずきくんとぼーっとしていました。

「俺、デュオリンゴっていうアプリをやってるんだけどさ」
「デュオリンゴ?」
「語学習得のアプリ。日を追うごとに難易度が上がって行くの」
「へえ」
「で、前まではフランス語やってたんだけど、ちょっと独学じゃついていけないくらい難易度が上がっちゃって。最近は英語をずっとやってる」
「それで早口言葉の時、英語に変換してたのか」
「出ちゃうんよね、ナチュラルに」
「……(そういう所やぞ)」

そういう所やぞ、と私は思いました。

「少し前に、リバーウォークで韓国の観光客らしき方々が困ってたから、英語で話しかけたんだ」
「それはすごい」
「いや、まあ、たどたどしい英語なんだけどさ。あんなのって、勇気じゃん。あぁ、自然にそういった行為ができる程度には習熟したんだなって、話」

すると、稽古場の管理をしているYさんが顔を出し、「今、デュオリンゴの話してました? 実は、私もしてるんです、デュオリンゴ。今、ログイン180日くらいで……」
「劇場のIさんが、もう1000日くらいやってるって言ってましたね」
「そうそう、そうなんです」

と、私の知らないアプリの話で盛り上がり始めたので、「いや、それで言ったら、俺だって、ロマサガのアプリ、もう2000日以上やってるが?」と水を差しました。

「は?」
「ロマサガのアプリ、2000日以上やってるが?」
「いや、それはゲームだから」
「まあ、そうなんだが」

ロマサガはスクエニのゲームなのですが、先日、ログインが2000日を越えました。
つまり、五年以上続けていることになります。
若干自分でも引いているのですが、同じゲームを五年続けるっていうのは、客観的に見ると、ちょっと狂気じみてます。

「何か、いいことあった?」
「何が?」
「ロマサガ、五年以上続けて」
「……時間が溶ける」
「それはいいこと? 悪いこと?」
「楽しいよ」
「ならまあ、いいか」

五年の間には、当然、「飽きたな」と思う時期もありました。
これは才能だと思っているのですが、私は、飽きても物事を続けることができるのです。
小学生の頃に習い事をたくさんしていて、どれも自分でやりたいと言って始めたことだったので、「辞めたい」と言っても両親がいい顔をせず、親の顔色を伺う子どもだった私は、一定の目標を達成するまで続けることを約束していたのでした。
その過程で培われた習性だと思っています。
それをゲームに発揮した所でどうしようもないのですが、劇作に関して言うと、この飽きても続ける習性のおかげで、乗り越えられた山は数多く存在します。

「雨、やまないねえ」
「うん」

そして、演劇を三十年続けている飯野智子に至っては、気が狂っているとしか思えない何かを持っていると言わざるを得ないでしょう。
雨をながめながら、彼女の演劇生活に想いを馳せたのでした。

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飯野智子演劇生活30周年記念公演
大体2mm『迷惑』
作:藤原達郎 演出:藤本瑞樹

日程:6月29日(土)14:00/18:00★パーティー回
     30日(日)14:00
会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場

詳細はこちら
https://about2mm.com/meiwaku/

クラウドファンディングも実施中です。
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