髪を切る

藤原です。

今回、演出助手として、本村彩乃さん(通称:あやのちゃん)に参加してもらっています。
あやのちゃんは、みずきくんとは以前から知り合いなのですが、他の参加者とは初対面で、稽古に初めて参加した日、大層緊張していました。しかし2回目の稽古で、キコさんが「あやのちゃん、髪切った?」と、若者の微細な変化に気づくというイケメンムーブをかまし、「実は、前髪を、少しだけ……」と、あやのちゃんも徐々に打ち解けてくれたのでした。

あやのちゃんが参加するようになってから数週間が経過し、世の中はゴールデンウィークに突入。セリフを脳と口に馴染ませる作業も後半戦です。
稽古前に、みずきくんがあやのちゃんを見るなり、「お、髪切った?」と言いました。私には全くその変化はわからなかったのですが、みずきくんは気付いたようでした。
するとあやのちゃんは、「いや、切ってませんが」と困惑しました。

「え、切ってない?」
「切ってません」
「あれだ、前髪だけ切った?」
「前髪は、少し前に切りました」
「うん、知ってる。だから、また切った?」
「え?」
「前髪、また切った?」
「そんなに切ったら、どんどん短くなる」
「どんどん短くなるにもかかわらず、切った?」
「切ってません」

どうやら、みずきくんの勘違いだったようです。

「え、なんで?」
「なんで?」
「なんで切ってないの?」
「え……え?」
「なぜ切らないのかと聞いている」
「え、だって、まだ、大丈夫だから」
「あぁ、そういう判断ね」
「え……はい」
「なるほど」

みずきくんとあやのちゃんの間(あいだ)に、演劇的な間(ま)が生まれた瞬間でした。

「切った方がよかったですか?」
「何?」
「いや、髪、切った方がよかったですか?」
「それを決めるのは、俺じゃないから」
「……まあ」
「それを決めるのは、あやのちゃんだから」
「そうですね」
「どうなの? 髪、切るの? 切らないの? それとももう切った?」
「切ってないし、まだ、大丈夫」
「そういう判断ね」
「……」
「実は前髪だけどんどん……」
「切ってません」

と、40代のおじさんのよくわからない絡みを華麗にいなす程度には、あやのちゃんも我々に馴染み、セリフのプロンプを入れてくれるのでした。
そしてみずきくんが、飯野さんに再び、「セリフどれくらい覚えた?」と聞いたところ、「5%くらい」と、前回より進行度合いが下がってました。

何が言いたいのかというと、稽古終わりにみんなでアイスを食べに行く程度には仲良しです。

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飯野智子演劇生活30周年記念公演
大体2mm『迷惑』
作:藤原達郎 演出:藤本瑞樹

日程:6月29日(土)14:00/18:00★パーティー回
     30日(日)14:00
会場:J:COM北九州芸術劇場 小劇場

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